アレルギー性鼻炎

  • 鼻腔内に特定のアレルゲンが入り込み、過敏に反応することで起こる炎症性疾患
  • くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状が特徴
  • 「花粉症」は、代表的な季節性アレルギー性鼻炎のひとつ

アレルギー性鼻炎とは、アレルゲン(花粉、ダニ、ハウスダストなど)に対する免疫反応が原因で発症する慢性的な鼻の疾患。代表的な症状として、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが挙げられます。

季節性(花粉症)と通年性(ダニ・ハウスダストが原因)の2種類に分類されます。日本では約40%の人がアレルギー性鼻炎を発症していると報告されています(厚生労働省データ)。

  • アレルゲン(原因物質)
    • 花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサなど)
    • ハウスダスト(ダニの死骸やフン)
    • ペットの毛やフケ
    • カビやカビの胞子
    • 食物アレルギーとの関連も指摘されることがある
  • 遺伝的要因
    • 親がアレルギー体質である場合、子供も発症しやすい
  • 環境要因
    • 大気汚染や生活習慣の変化が影響を及ぼす可能性
    • 室内環境の清掃不足がダニ・カビの発生を促す

アレルギー性鼻炎の原因となる物質(アレルゲン)は多岐にわたります。日本ではスギやヒノキ花粉が主たる原因として知られ、特に春先(2〜4月ごろ)にスギ花粉、続いてヒノキ花粉の飛散がピークを迎え、多くの方が鼻水・くしゃみ・目のかゆみなどを訴えます。

一方、ブタクサなどの秋の花粉も原因になることがありますし、ダニやハウスダストによる通年性アレルギー性鼻炎も少なくありません。

ペットアレルギーでは、犬や猫の毛やフケ、鳥の羽毛などがアレルゲンとなりやすく、室内で飼育されている場合は症状が一年を通して続くことも特徴です。また、大気汚染物質やタバコの煙、エアコンによる空気の乾燥などは、鼻粘膜の防御機能を低下させ、アレルギー症状を悪化させる要因となります。

  • 主な症状
    • くしゃみ(連続的に出ることが多い)
    • 水のような鼻水(サラサラしている)
    • 鼻づまり(慢性的になりやすい)
    • 目のかゆみや充血を伴うこともある
  • 症状の重症度分類
    • 軽症:日常生活に大きな支障がない
    • 中等症:仕事や学業に影響がある
    • 重症:睡眠障害や集中力の低下が生じる

アレルギー性鼻炎といえば「くしゃみが連続で出る」「さらさらとした透明な鼻水が止まらない」「鼻づまりがひどく、口呼吸になりがち」という三大症状が特に有名です。これらの症状は、花粉やダニなどのアレルゲンが鼻粘膜に付着した際に、免疫反応によってヒスタミンなどの化学物質が放出されることで誘発されます。

さらに、粘膜の炎症が周辺の組織にも影響を及ぼすことで、目のかゆみや充血、涙目などのアレルギー性結膜炎の症状が出る場合も少なくありません。長期間、鼻づまりが続くと、睡眠障害や集中力の低下、頭痛を引き起こすこともあります。また、症状がひどい場合には嗅覚が低下し、食事の味を感じにくくなるなど、生活の質に大きなダメージを与えることもあります。

  • 問診と症状の確認
    • 症状の発生時期や持続時間を確認
  • アレルギー検査
    • 血液検査(IgE抗体の測定)
    • 皮膚プリックテスト(皮膚にアレルゲンを少量付けて反応を見る)
    • 鼻汁好酸球検査(鼻水の中の好酸球の数を調べる)
    • 負荷試験:(特定のアレルゲンを吸入し、症状を観察)

アレルギー性鼻炎の診断では、まず医師が問診を通じて「いつごろから症状が出始めたか」「どのような環境で悪化しやすいか」などを詳しく確認します。さらに、鼻鏡や内視鏡を用いて鼻粘膜の腫れ具合や分泌物の状態を観察することで、他の鼻疾患(鼻中隔弯曲症、鼻ポリープなど)と鑑別します。

血液検査では、特定のアレルゲンに対するIgE抗体の有無や量を測定することで、どのアレルゲンが原因かを大まかに推測できます。さらに詳細な検査としては、皮膚にアレルゲンを少量つけて反応をみる「皮膚プリックテスト」、鼻汁中の好酸球数を調べる「鼻汁好酸球検査」なども行われることがあります。検査結果を総合し、医師がアレルギー性鼻炎の確定診断を下します。

  • 花粉症のある人は、特定の果物や野菜で口の中がかゆくなる「口腔アレルギー症候群」を発症することがあります。
  • 例:スギ花粉症の人はトマト、シラカバ花粉症の人はリンゴで反応することが多い。

花粉症は、スギやヒノキなどの花粉に免疫が過敏に反応することで、くしゃみ・鼻づまり・目のかゆみなどを引き起こす季節性アレルギー性鼻炎の一種です。飛散時期だけ症状が現れるのが特徴で、日本では特に春先のスギ花粉症が広く知られています。

一方、口腔アレルギー(オーラルアレルギー症候群)は、特定の花粉に対するアレルギーが、果物や野菜などに含まれる類似タンパク質と“交差反応”を起こすことで生じる症状です。たとえば、シラカバ花粉症を持つ人がリンゴを食べた際、口やのどのかゆみや軽い腫れを感じることがあります。

いずれも重症化すると生活の質を大きく損なうため、花粉症シーズンにはマスク着用や帰宅後の花粉除去などの対策を徹底し、口腔アレルギーが疑われる場合は、原因となる食品を特定して加熱調理や医師への相談を行うことが重要です。

  • 薬物療法
    • 抗ヒスタミン薬(アレルギー反応を抑える)
    • ステロイド点鼻薬(炎症を抑える)
    • 抗ロイコトリエン薬(鼻づまりを軽減)
  • 免疫療法(アレルゲン免疫療法)
    • スギ花粉やダニの舌下免疫療法が有効
    • 長期的な治療が必要(3年以上)
  • 手術療法
    • 鼻粘膜のレーザー治療
    • 下鼻甲介切除術(鼻づまりが重症の場合)

アレルギー性鼻炎の治療は、大きく分けて「薬物療法」「アレルゲン免疫療法」「手術療法」の3つに分類されます。最も一般的なのが薬物療法で、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、ステロイド点鼻薬などを使用して症状を抑えます。

特に抗ヒスタミン薬は、くしゃみや鼻水といった症状の緩和に効果が期待できますが、眠気や口渇といった副作用が出やすい薬剤も存在します。最近は、眠気を抑えた第二世代抗ヒスタミン薬が中心となっているため、日常生活への影響は軽減されつつあります。

点鼻薬では、ステロイド薬が粘膜の炎症を抑える主力の薬剤として用いられ、鼻づまりの改善に特に効果的です。薬で十分な効果が得られない場合や、長期的な根治を目指す場合には、特定のアレルゲンに少しずつ慣れさせる「アレルゲン免疫療法」(特に舌下免疫療法)が検討されます。さらに、粘膜を焼灼するレーザー治療や、鼻づまりが重度の場合には鼻甲介を切除・粘膜を切開する手術療法が選択肢となります。

  • 室内環境の改善
    • こまめな掃除と換気
    • 空気清浄機の使用
    • 防ダニ寝具の利用
  • 外出時の対策
    • マスクやメガネの着用
    • 花粉が多い時期は外出を控える
  • 食生活の改善
    • 抗酸化作用のある食品(ビタミンC、ポリフェノール)を摂取

アレルギー性鼻炎の対策で最も重要とされるのが、原因となるアレルゲンをいかに回避するかです。花粉症の場合、花粉の飛散が多い時期には外出時にマスクやメガネを着用して鼻粘膜や目を保護し、帰宅後には衣服や髪についた花粉を払い落としたり、シャワーで洗い流すなどの対策が効果的です。部屋の換気は必要ですが、花粉の飛散量が多い昼間を避けて行うなど、時間帯を工夫することも大切です。

  • 花粉症: 季節限定(スギ・ヒノキが主)
    • 花粉症は特定の季節にのみ症状が現れる。日本ではスギ花粉が2~4月、ヒノキ花粉が3~5月に多く飛散するため、この時期に症状が悪化しやすい。
  • 通年性アレルギー性鼻炎: 1年中発症(ダニ・ハウスダストが原因)
    • ダニやハウスダストが原因の場合、季節に関係なく一年中症状が出る。特に布団やカーペット、エアコンのフィルターなどに多く存在するため、掃除が予防策となる。
  • 症状の違い: 花粉症は目のかゆみが強い傾向
    • 花粉症は目の充血や強いかゆみを伴うことが多い。一方、通年性アレルギー性鼻炎は主に鼻水や鼻づまりが主症状となる。

アレルギー性鼻炎は、ハウスダスト、ダニ、花粉、カビ、動物の毛など、さまざまなアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)に対して鼻の粘膜が過剰に反応して起こる鼻炎のことです。

一方で、花粉症はアレルギー性鼻炎のうちでも「花粉」が原因となって発症するものを指します。花粉症は季節性がはっきりしており、特にスギやヒノキ、ブタクサなど特定の花粉が飛散する時期に症状が強くなるのが特徴です。つまり、花粉症はアレルギー性鼻炎の一種ではありますが、原因物質が明確に“花粉”である点と、季節的に症状が出やすい点が大きな特徴となります。

  • アレルギー性鼻炎は発熱しない
    • 風邪はウイルス感染による炎症反応のため発熱を伴うことがあるが、アレルギー性鼻炎では発熱しない。
  • 鼻水は透明で水っぽい
    • 風邪では鼻水が黄色や緑色に変化することがあるが、アレルギー性鼻炎の鼻水は常に透明でサラサラしている。
  • 風邪は通常1週間ほどで治るが、アレルギー性鼻炎は長引く
    • 風邪は免疫システムがウイルスを排除することで治るが、アレルギー性鼻炎はアレルゲンにさらされ続ける限り症状が続く。

アレルギー性鼻炎は、上記のようにアレルゲンに対して免疫反応が過剰に起こることでくしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が現れるものです。特徴としては、目や鼻のかゆみを伴うことが多く、水のようにさらさらとした鼻水が出やすい点が挙げられます。また、症状が長期間続いたり、特定の環境(花粉が多い場所、ホコリっぽい部屋など)で悪化したりすることがよくあります。

一方、風邪はウイルスなどの感染によって起こる症状で、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどアレルギー性鼻炎と似た症状が出ることもありますが、発熱やのどの痛み、倦怠感など全身症状を伴うことが多いのが異なるポイントです。

また、風邪の場合は通常1週間程度で自然に治まることが多いのに対し、アレルギー性鼻炎は原因のアレルゲンがある限り、症状が長引いたり慢性化したりすることが多いという違いがあります。

  • 規則正しい生活で免疫力を向上させる
    • 睡眠不足や不規則な食生活は免疫力を低下させ、アレルギー症状を悪化させる可能性がある。
  • 食事に気をつけ、ビタミンDやEPAを含む食品を摂取
    • 魚やきのこ類に多く含まれるビタミンDやEPA(オメガ3脂肪酸)は、免疫のバランスを整え、アレルギー反応を抑制する効果がある。
  • 適度な運動とストレス管理が重要
    • 軽い有酸素運動やストレス軽減のためのヨガ・瞑想を取り入れることで、免疫機能が向上し、症状の軽減が期待できる。

アレルギー性鼻炎の症状を軽減するには、原因となるアレルゲンを遠ざける工夫とともに、日常生活の改善も重要です。まず、十分な睡眠をとり、栄養バランスのよい食事を心がけることで免疫機能が整い、アレルギー症状がやや落ち着きやすくなるといわれています。また、ストレスの蓄積は免疫バランスを乱しやすいと考えられるため、適度な運動やリラックスできる時間を確保し、ストレスをこまめに発散することも大切です。

さらに、部屋の掃除や換気をこまめに行い、ハウスダストやダニなどをできるだけ減らすことが、通年性アレルギー性鼻炎の予防と症状緩和につながります。特に寝室は長時間過ごす場所のため、布団や枕、カーペットなどを清潔に保つ工夫が効果的です。

花粉症の場合も、外出時には花粉を衣服や髪につけにくい対策(マスクやメガネの着用、帰宅時の洗顔・うがいなど)を行い、室内への花粉の侵入をなるべく抑えることが重要になります。日々の生活習慣を見直し、免疫力を整えつつアレルゲンを回避する工夫を重ねることで、アレルギー性鼻炎の症状はある程度コントロールしやすくなります。

  • 副鼻腔炎(鼻詰まりが慢性化すると起こりやすい)
    • 鼻詰まりが続くと副鼻腔に炎症が広がり、顔の痛みや頭痛、鼻の不快感を引き起こすことがある。
  • 中耳炎(子供に多い)
    • 鼻と耳をつなぐ耳管が炎症を起こし、耳の痛みや難聴を伴うことがある。特に子供は耳管が狭いため、中耳炎になりやすい。
  • 睡眠障害や集中力の低下
    • 鼻詰まりによる呼吸困難が睡眠の質を低下させ、日中の集中力低下や疲労感につながることがある。

アレルギー性鼻炎の症状を放置してしまうと、鼻腔内の炎症が広がり、副鼻腔炎(蓄膿症)を引き起こす可能性があります。副鼻腔に炎症が波及すると、頭痛や顔面痛、さらに頬や眉間が重苦しくなるといった症状が出現し、治療期間も長引くことがあります。また、アレルギー性鼻炎に伴う鼻づまりは、気道全体の機能に影響を与え、中耳炎や睡眠障害を引き起こす要因となることもあります。

市販薬(抗ヒスタミン薬や点鼻薬)の自己判断による長期使用は、副作用のリスクや薬剤性鼻炎(点鼻薬の使いすぎで鼻粘膜が炎症を起こす状態)を引き起こす場合があるため注意が必要です。症状が続く場合や悪化した場合は、早めに耳鼻咽喉科や内科を受診して適切な治療方針を立てることが重要となります。

  • 抗ヒスタミン薬:眠気、口の渇き
    • 抗ヒスタミン薬はアレルギー反応を抑えるが、第一世代のものは強い眠気を引き起こすことがある。
  • ステロイド点鼻薬:鼻の乾燥、刺激感
    • 炎症を抑える効果があるが、長期間使用すると鼻の乾燥や刺激を感じることがある。
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬:頭痛、吐き気
    • アレルギー性鼻炎の治療に用いられるが、頭痛や吐き気の副作用が出ることがある。

抗ヒスタミン薬は、アレルゲンが体内に入って放出されるヒスタミンという物質の働きを抑えることで、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状を和らげます。アレルギー性鼻炎の治療において最もよく使われる薬のひとつですが、その一方で副作用として眠気が生じることは広く知られています。特に第一世代の抗ヒスタミン薬(例:クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミンなど)は中枢神経系への移行性が高いため、強い眠気を引き起こす場合があります。

これに対して、第二世代の抗ヒスタミン薬(例:セチリジン、フェキソフェナジン、エバスチンなど)は、脳への移行を抑える工夫がされており、比較的眠気が少ないと言われています。しかし、個人差があるため、全く眠気がないわけではありません。車の運転や集中力を要する作業を行う際には、自分が服用している薬の特性と副作用をよく理解しておくことが重要です。

口の渇きに関しては、副交感神経の働きを抑える作用があるために起こります。長期服用で症状が気になる場合は、医師や薬剤師に相談して薬の変更や水分補給のタイミングを検討すると良いでしょう。

  • 温かい飲み物で鼻の通りを良くする
    • 温かい飲み物(ハーブティーや生姜湯)を摂取することで、鼻の血流を改善し、通りを良くする効果がある。
  • 蒸しタオルで鼻を温める
    • 鼻の周りを温めることで粘膜の血流が促進され、鼻づまりが軽減される。
  • ヨガや瞑想でリラックス
    • ストレスはアレルギー症状を悪化させるため、リラックスすることで症状の改善が期待できる。

アレルギー性鼻炎の鼻づまりは、粘膜の炎症や血流障害が原因になるため、温かい飲み物を摂取して体を温めることが有効とされています。生姜湯やハーブティーなどにはリラックス効果もあり、心身両面から症状の緩和に役立ちます。寒い季節や空調の効いた室内では特に鼻が乾燥しがちなので、水分補給の一環としても温かい飲み物はおすすめです。

鼻づまりがひどいときは、蒸しタオルや温かいパックを鼻や頬のあたりに当てると、一時的に粘膜の血流が促進されるため、鼻づまりが軽くなることがあります。蒸しタオルは、熱すぎない温度に調整し、数分おきに取り換えながら使うのがポイントです。やけどのリスクを避けるため、熱い場合は少し冷ましてから使用してください。

アレルギー性鼻炎は完治しますか?

免疫療法を行うことで症状を抑えられる可能性があります。

どの時期に発症しやすい?

春(スギ花粉)、秋(ブタクサ)に多いが、通年性のケースもあり。

  • アレルギー性鼻炎は日本人の約40%が発症。
  • 季節性と通年性がある。
  • 主な症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまり。
  • 花粉、ダニ、ハウスダストが主な原因。
  • 治療法は薬物療法、免疫療法、手術療法。
  • 免疫療法の改良により、より短期間での治療も期待。
  • 検査でアレルゲンを特定し、適切な対策を。
  • 生活習慣の改善が予防に効果的。