中性脂肪について

中性脂肪とは

中性脂肪は、体内の脂肪組織に蓄えられるエネルギー源であり、私たちが活動するための大切なエネルギーを供給しています。必要に応じて分解されて体を動かす燃料になりますが、過剰に蓄積されると健康上の問題を引き起こします。

健康診断では血液中の中性脂肪値を測定し、一般に空腹時の値で30～149 mg/dLが「正常範囲」とされています。150 mg/dL以上になると基準より高い「高中性脂肪」と判定され、以下のように重症度が分類されます。

• 正常値: 30～149 mg/dL（空腹時）
• 軽度の高脂血症: 150～199 mg/dL
• 中等度の高脂血症: 200～499 mg/dL
• 重度の高脂血症: 500 mg/dL以上

例えば健康診断で「中性脂肪500mg/dL以上」と指摘された場合、これは重度の高脂血症にあたります。このレベルまで中性脂肪が高い状態は決して見過ごせません。中性脂肪自体はエネルギー備蓄として必要なものですが、高すぎる状態が続くと体に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。

なぜ中性脂肪が高くなる？

中性脂肪の値が高くなる背景には、主に生活習慣と基礎疾患の二つの側面があります。

過剰なエネルギー摂取や運動不足により体内に余分なエネルギーが蓄積されると、肝臓で中性脂肪が合成され脂肪組織に蓄えられます。その結果、血液中の中性脂肪値も上昇します。また、特定の病気や体質も中性脂肪を上げる要因となります。中性脂肪が高くなる主な原因は次のとおりです。

以上のような原因が重なって中性脂肪が高くなるケースも多く見られます。

特に働き盛りの30～50代の方は、忙しさから食生活の偏りや運動不足、付き合いでの飲酒機会増加などにより中性脂肪が高くなりやすい傾向があります。「中性脂肪500mg/dL以上」など高い数値を指摘された場合、まずは生活習慣を振り返り、必要に応じて医療機関で精密な評価を受けることが大切です。

中性脂肪500mg/dL以上を放置するリスクとは

中性脂肪の値が高い状態をそのまま放置すると、体の様々な臓器や血管に負担がかかり、将来的に深刻な病気を引き起こすリスクが高まります。特に中性脂肪が500 mg/dLを超えるような状態は重度であり、以下のような重大なリスクが指摘されています。

動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳卒中などのリスク増加

血液中に脂質（コレステロールや中性脂肪）が多い状態が続くと、血管の内壁に脂肪が沈着しやすくなり、動脈硬化（血管の老化・硬化）が進行します。

動脈硬化が進むと血管が狭く硬くなるため、心臓や脳への血流が悪くなり、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった命に関わる病気を発症するリスクが高まります。事実、脂質異常症（高脂血症）は動脈硬化の最大の危険因子の一つであり、中性脂肪が高い状態も例外ではありません。

特に中性脂肪値が非常に高い場合、悪玉コレステロール（LDL）の粒子が小型化して血管壁に入り込みやすくなるほか、善玉コレステロール（HDL）が減少する傾向が知られています。

その結果、血管に脂肪が溜まりやすくなり、動脈硬化を間接的に促進してしまいます。

ある研究 では中性脂肪が300 mg/dLを超えると心臓病（冠動脈疾患）のリスクが約2倍になるとの報告もあり、中性脂肪が高い人ほど将来的な心血管疾患発症リスクが上昇することが示唆されています。

自覚症状がなくとも、中性脂肪500 mg/dLのような高い数値をそのままにしておくと、知らないうちに血管のダメージが蓄積し、将来突然に心筋梗塞や脳卒中を起こす危険性があります。

脂肪肝など肝臓への影響

中性脂肪の過剰は肝臓にも負担をかけます。余分な中性脂肪は皮下や内臓周りに蓄積されますが、蓄えきれないほどになると肝臓など本来脂肪を多く蓄えない臓器にも脂肪が沈着します。その典型が脂肪肝です。

脂肪肝は文字通り肝臓に脂肪が溜まった状態で、これ自体は初期には自覚症状がほとんどありません。

しかし、脂肪肝を放置すると肝臓に慢性的な炎症を引き起こし、肝炎や肝硬変へと進行する場合があります。特に中性脂肪が高い人は糖尿病も合併していたり、日常的に飲酒量が多かったりする傾向があり、それらがさらに脂肪肝を悪化させる要因となります。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、重度になるまで症状が出にくいですが、脂肪肝の段階で適切な対策をとることが将来の重篤な肝疾患を防ぐために重要です。

急性膵炎のリスク

中性脂肪値が極めて高くなる（目安として500～1000 mg/dL以上）と、急性膵炎（すい臓の炎症）を引き起こす危険性が高まります。急性膵炎になると、みぞおちから背中にかけて激しい腹痛が突然起こり、吐き気や発熱を伴うこともあります。重症化すると命に関わる場合もある非常に怖い病気です。中性脂肪があまりにも多いと、血液中で乳び（ちゅうび）といって牛乳のように白く濁った状態になることがあります。

中性脂肪が600 mg/dLを超えるようなレベルでは、血液が一日中クリーム状に濁るケースも報告されており、大量のアルコール摂取や糖尿病のコントロール不良が誘因となって急性膵炎を発症することがあります。

実際、「中性脂肪が500を超えると急性膵炎のリスクが上昇する」というデータもあり、中性脂肪500 mg/dL以上と指摘された方は決して放置せず医師の診察を受けるべきレベルと言えます。

急性膵炎は一度発症すると入院治療が必要となり、重症では集中治療管理や外科的処置が行われることもあります。こうした事態を防ぐためにも、中性脂肪が極端に高い場合には早急に適切な治療介入を行い、膵炎の発症を未然に防ぐことが重要です。

以上のように、中性脂肪500 mg/dL前後の値を放置することは動脈硬化の進行による心筋梗塞・脳卒中リスクの増大、脂肪肝の悪化、そして急性膵炎など命に関わる状態につながるおそれがあります。現在症状がなくても油断せず、早めに対策を講じることが大切です。

よくある質問

健康診断で「中性脂肪が高い」と言われました。すぐ病院に行くべきでしょうか？

健康診断で中性脂肪の高値を指摘されたら、なるべく早めに医療機関を受診することをおすすめします。特に中性脂肪500 mg/dL前後といった著しい高値の場合は放置せず必ず医師に相談すべきレベルです。中等度（200～300台）の場合でも、早めに一度受診しておくのが無難でしょう。中性脂肪は空腹時に再検査すると正常範囲に収まるケースもありますが、高めの傾向があること自体が将来の動脈硬化リスクにつながります。症状がなくても検査数値は体からの大切なサインですので、油断せず専門家の評価を受けてください。

中性脂肪が高いとどんな症状がありますか？

中性脂肪が高いだけでは、ほとんどの場合これといった自覚症状はありません。多くの方は健康診断の結果を見るまで自分の中性脂肪が高いことに気づかないでしょう。ただし、極端に高い場合（500～1000 mg/dL以上）になると、血液が乳白色に濁るほど脂肪が増え（一種の乳び血症）、その状態で急性膵炎を起こすと激しい腹痛や嘔吐などの症状が現れます。急性膵炎は命に関わる重篤な状態です。また、中性脂肪が高い状態が長年続いて動脈硬化が進行すると、狭心症・心筋梗塞や脳卒中を起こした際に胸の痛みや麻痺症状などが現れます。しかしそれらは中性脂肪が高い間ずっと出る症状ではなく、合併症として突然起こるものです。したがって、中性脂肪の高さそのものはサイレント（無症状）でも油断は禁物です。定期検査でチェックし、高い状態が続く場合はきちんと治療しましょう。

薬を飲み始めたら、一生飲み続けないといけませんか？

必ずしも一生飲み続けないといけないわけではありません。中性脂肪やコレステロールを下げる薬は、あくまで合併症を予防するために数値を適正化する手段です。大切なのは、薬を避けることよりも、高いまま放置することで将来起こり得る深刻な病気（心筋梗塞や脳卒中、膵炎など）を未然に防ぐことです。医師が薬を処方する場合は、その方が得られるメリットが副作用などのデメリットより大きいと判断した場合です。

一度薬を開始したあとでも、生活習慣の改善によって中性脂肪が十分下がり、薬なしでも安全と判断されれば中止できる可能性もあります。実際、食事・運動療法を徹底することで薬の減量や休薬が可能になるケースもあります。ただし自己判断で薬を中断するのは危険です。

定期的な検査データを見ながら適切なタイミングで薬の調整を行いますので、「ずっと飲み続けるかも…」と心配せずにまずは治療を継続してください。当院では患者さまの不安を伺いながら、無理のない範囲で薬の減量・中止も視野に入れた治療計画を立てていきます。

当院でのサポート

高めの中性脂肪値を指摘され不安に思われている方は、しずく内科クリニック東池袋へご相談ください。

放置しがちな検査結果も、内科専門医の視点で適切に評価・対処することで将来のリスクを大きく減らすことができます。生活習慣の見直しから薬物療法まで総合的にサポートし、皆さまの健康管理のお手伝いをいたします。「中性脂肪が高い」と言われた方も、一人で悩まずにお気軽にご相談ください。

当院と一緒に、安心して毎日を過ごせるよう健康づくりに取り組んでいきましょう。