舌下免疫療法とは
舌下免疫療法(SLIT)は、アレルギー性鼻炎の根本的な治療法として注目されています。
- 概要
- 舌下免疫療法(SLIT: Sublingual Immunotherapy)は、アレルゲンに対して過剰に反応する免疫系を「再教育」する方法です。患者はアレルギーの原因となる物質(例えば、花粉やハウスダスト)を含んだ薬剤を、舌の下に直接投与します。この方法によって、体はそのアレルゲンに対する免疫耐性を築き、アレルギー症状を和らげます。
- 従来の方法
- アレルギー治療では注射を使った皮下免疫療法(SCIT)が主流でしたが、舌下免疫療法は自宅で簡単に行えることから、患者の負担が少なく、広く利用されるようになっています。
- 対象となるアレルギー
- 主にスギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎が対象となります。
舌下免疫療法のメリット
- 根本的な治療
- 対症療法とは異なり、アレルギーの原因に直接働きかけ、体質の改善を目指します。
- 長期的な効果
- 治療を完了した後も、効果が持続することが報告されています。
- 自宅での服用
- 通院の頻度が少なく、自宅での服用が可能なため、生活の負担が軽減されます。
舌下免疫療法の最も大きなメリットは、患者が自宅で治療を行える点です。治療に通院する必要がなく、自己管理で治療が可能です。また、注射による治療に比べて、痛みがなく、副作用も非常に少ないのが特徴です。
例えば、皮下免疫療法では、注射後にアレルギー反応が強く現れることがありますが、舌下免疫療法ではそのリスクが少なく、舌下でのアレルゲン投与は安全に行えることが多いとされています。さらに、舌下免疫療法は継続的に行うことで、アレルギー症状の軽減が期待でき、長期的には薬の使用を減らすことが可能です。
舌下免疫療法のデメリット
- 副作用の可能性
- 口内のかゆみや腫れ、喉の違和感などの副作用が報告されています。
- 効果の個人差
- 全ての患者に効果があるわけではなく、効果の程度には個人差があります。
- 治療期間の長さ
- 効果を得るためには、3~5年の継続的な治療が必要とされています。
治療の流れ
- 診断
- アレルギー検査を行い、スギ花粉やダニに対するアレルギーがあるかを確認します。
- 治療開始前の評価
- アレルギーの症状がどの程度であるか、また他に合併症がないかをチェックし、治療計画を立てます。
- 初回投与
- 医療機関で初回の薬剤投与を行い、副作用の有無を確認します。
- 自宅での継続
- 初回以降は、自宅で毎日薬剤を服用します。
- 定期受診
- 定期的に医療機関を受診し、治療の効果や副作用の有無を確認します。
アレルギー性鼻炎
- 症状の概要
- 原因となるアレルゲン
- 舌下免疫療法の効果
アレルギー性鼻炎は、花粉やほこり、動物の毛などに対して免疫系が過敏に反応し、鼻水、くしゃみ、鼻詰まり、目のかゆみなどの症状が引き起こされる疾患です。舌下免疫療法は、これらの症状を改善する有効な治療法として注目されています。
アレルギー性鼻炎の主な原因アレルゲンは、スギ花粉やダニ、ペットの毛、カビなどです。これらのアレルゲンに対して免疫系が過剰反応を示すことで症状が悪化します。舌下免疫療法では、少しずつアレルゲンを体に慣らし、免疫系を正常に戻していくことができます。
副作用について
- 一般的な副作用
- 口内のかゆみ、腫れ、喉の違和感などが報告されています。
- 重篤な副作用
- まれにアナフィラキシーショックなどの重篤な副作用が起こる可能性があります。
診断方法
- 血液検査
- アレルギーに関連する抗体(IgE)のレベルを測定することで、アレルギーの有無を確認できます。
- 皮膚テスト
- 小さな針でアレルゲンを皮膚に刺し、その反応を観察します。これにより、どのアレルゲンが問題であるかを明確にできます。
- 問診
- アレルギー症状の履歴や環境など、患者の生活状況について医師が詳しく聞き取りを行います。
舌下免疫療法の対象となるアレルギー
- スギ花粉症
- スギ花粉が原因で、春先に症状が悪化することが多いです。
- ダニアレルギー性鼻炎
- ダニが原因で、年間を通じて症状が現れることがあります。
治療期間と効果
- 治療期間
- 3~5年の継続的な治療が推奨されています。
- 効果の発現
- 治療開始から数ヶ月で効果を実感する方もいますが、個人差があります。
治療開始のタイミング
- スギ花粉症
- 花粉の飛散時期を避け、6~12月に治療を開始することが推奨されています。
- ダニアレルギー性鼻炎
- 年間を通じて治療を開始できます。
治療中の注意点
- 服用のタイミング
- 毎日決まった時間に服用することが重要です。
- 体調管理
- 体調が悪い日は服用を控えるなど、自己管理が求められます。
対象年齢
- 5歳以上
- 成長期の子供
- 成人
舌下免疫療法は、5歳以上の子供から成人まで幅広い年齢層で実施可能です。特にアレルギーが発症したばかりの子供や、成人期にアレルギー症状が悪化した人々に対して効果が期待されます。治療開始が早いほど、長期的な効果が得られる可能性が高いとされています。
舌下免疫療法と皮下免疫療法の違い
- 治療方法の違い
- 舌下免疫療法は、舌の下にアレルゲンを含む薬剤を投与する方法で、自宅で行えるのが特徴です。一方、皮下免疫療法は、アレルゲンを注射で体内に投与します。
- 副作用の違い
- 舌下免疫療法は、副作用が少ないとされていますが、皮下免疫療法では注射後にアレルギー反応が強く出ることがあります。
- 効果の持続期間の違い
- 両者とも長期間にわたって効果が持続しますが、皮下免疫療法では効果が早く現れることがあり、逆に舌下免疫療法は少し時間がかかる傾向があります。
費用について
- 治療費の目安
- 舌下免疫療法の薬剤費は、健康保険適用で 月額約2,000〜3,000円 です。
- 診察料を含めると、1ヶ月あたり 3,000〜5,000円 ほどかかることが多いです。
- 3年間継続すると、合計で 約10〜15万円 かかる計算になります。
- 医療費控除の対象になる可能性
- 1年間の医療費が 10万円以上 になる場合、確定申告で 医療費控除 を申請できることがあります。
- 詳細は税務署や医療機関に相談するとよいでしょう。
よくある質問
- 治療は誰でも受けられますか?
-
スギ花粉症やダニアレルギー性鼻炎と診断された方が対象です。
- 治療期間はどのくらいですか?
-
通常、3~5年の継続的な治療が推奨されています。
- 副作用が心配です。
-
副作用は軽度なものが多いですが、重篤な副作用の可能性もゼロではありません。医師と相談の上、治療を進めてください。
まとめ
舌下免疫療法は、アレルギー性鼻炎に対する根本治療として有効な選択肢ですが、長期間の継続が必要であり、副作用のリスクも考慮する必要があります。以下のポイントを押さえて、治療を検討しましょう。
- 舌下免疫療法は、スギ花粉症やダニアレルギーに対する根本治療法。
- 治療期間は3~5年と長期間だが、治療終了後も効果が持続する可能性が高い。
- 副作用として口内のかゆみや喉の違和感があるが、重篤な副作用はまれ。
- 自宅で毎日服用できるため、通院の手間が少ない。
- 費用は月3,000~5,000円程度、3年間で約10~15万円かかる。
- スギ花粉症の場合は6~12月に治療開始するのが望ましい。
- 5歳以上が治療対象となることが多い。
- 医療費控除の対象になる場合があるため、確定申告の際に確認するとよい。