急性胃腸炎の場合、ほとんどが感染性の胃腸炎です。急性胃腸炎には、急激に始まる嘔吐や下痢、腹痛といった特徴があります。急性胃腸炎の原因にはウイルス性、細菌性、その他薬剤性のものや寄生虫によるもの、などがあります。
急性胃腸炎の一般的な症状
下記の症状が代表的です。
- 腹痛
- 下痢
- 嘔吐
- 発熱
急性胃腸炎の原因
- ウイルス性胃腸炎
- ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスが主な原因です。
- 細菌性胃腸炎
- サルモネラ菌、病原性大腸菌、カンピロバクターなどが関与します。
- 寄生虫性胃腸炎
- アニサキスなどの寄生虫が原因となります。
急性胃腸炎の伝染経路
- 飲食物を通じた感染
- 汚染された食品や水を摂取することで感染します。食品からの感染で多いのは貝類による物で、汚染された二枚貝を生や加熱が不十分なまま食べることで感染します。
- 接触感染
- 感染者の嘔吐物や便を触った手やその手で触れた物を介して口に入り感染します。
- 空気感染
- 感染者の嘔吐物が乾燥し、そこからウイルスが空気中に飛散し、そのウイルスを吸い込むことで感染します。
急性胃腸炎の症状と進行
突然の嘔吐で始まり、約1日位はムカムカが続きます。嘔吐には、2通りのパターンがあり、半日くらいの間に何回も嘔吐を繰り返すことが多いです。時に、1日1~2回くらいの嘔吐が2~3日続くこともあります。嘔吐に続いて下痢が見られることが多く、3、4日~1週間位続きます。
子どもや高齢者は重症化しやすく、注意が必要です。水分と栄養の補給を十分に行い体力が消耗しないようにしましょう。
急性胃腸炎の診断方法
医師が症状や経過を聞き取りし、便検査や血液検査で原因を特定します。
急性胃腸炎の治療方法
特別な治療方法はありません。治療の中心は、脱水を防ぐためのこまめな水分補給、安静、整腸剤内服などの対症療法となります。
- 自宅でのケア
- 十分な水分補給と消化の良い食事を心がけましょう。
- 薬物療法
- 細菌性の場合、抗生物質が処方されることがあります。一般的に抗生剤が処方されるときには整腸剤も一緒に処方されます。
- 病院での治療
- 重症の場合、入院して点滴などの治療を受けます。
急性胃腸炎の予防方法
- 手洗いと衛生管理
- 日頃から調理前後・食事前・トイレの後などに、石けんを使って、流水で手をしっかりと洗いましょう。手洗い後のタオルは共用せず、個人用タオルかペーパータオルを使用すると良いです。
- ウイルスによる感染性胃腸炎では、感染している人の嘔吐物、便から感染します。嘔吐物が乾燥するとウイルスが容易に空中に漂い、その飛沫をわずかでも吸い込むことで感染するため、嘔吐物を処理する際には3原則である①すばやく処理する ②乾燥させない ③消毒する を守って処理しましょう。
- 飲食物の注意点
- 食品は十分に加熱しましょう。カキなどの二枚貝は、中心部まで十分に加熱すること。湯通し程度では、ウイルスは死滅しません。特に高齢者や乳幼児では注意です!
- 貝類を調理したまな板や包丁は、すぐに熱湯消毒しましょう。
- 野菜、果物などの生鮮食品は、水道水で十分に洗いましょう。
- ワクチン接種
- ロタウイルスのみ予防接種(外部サイト)があります。
定期接種として生後6週0日後から接種を受けることができますが、接種期間が短く限られているので、タイミングを逃さないようかかりつけの小児科医とよく相談してください。(当クリニックではロタウイルスワクチンの接種は行っておりません)。
- ロタウイルスのみ予防接種(外部サイト)があります。
急性胃腸炎と食事管理
- 発症時の食事の工夫
- 嘔吐した直後は飲んだり食べたりせずに胃腸を休め、寝かせてあげると良いでしょう。吐き気がなくなれば(1時間後くらいがめやす)、1回5㏄程度(スプーン1杯程度)の量を10~15分間隔で水分補給しつつ、消化の良い食べ物を少量ずつ摂取しましょう。
- 回復期の食事のポイント
- 徐々に通常の食事に戻します。
- 避けるべき食べ物
- 脂っこいものや刺激物は避けたほうがよいでしょう。
急性胃腸炎に関する誤解と真実
よくある誤解
- 手洗いだけで十分に予防できる。
- 手洗いは非常に効果的な予防策ですが、ウイルス性胃腸炎の予防には他にも食品の衛生管理や適切な調理、消毒などが必要です。特にノロウイルスは非常に感染力が強いため、複数の対策を併用することが求められます。
急性胃腸炎に関する最新情報
予防接種の進展
ロタウイルスワクチンの普及が進んでいます。ロタウイルスワクチンは、日本では2020年10月1日から定期接種となり、公費で接種できるようになりました。これにより、生後6週から32週までの乳児は無料でワクチン接種を受けることができます。
ロタリックス®(1価)、ロタテック®(5価)、いずれのワクチンも経口摂取であり、初回の接種は生後6週から14週6日までに行い、その後、27日以上の間隔をあけて次の接種を行います。ロタウイルスワクチンを接種することで、重症胃腸炎による入院リスクを70〜90%減少させる効果があるとされています。
子どもと高齢者の急性胃腸炎対策
子どもの急性胃腸炎の特徴
症状が急激に進行するため、早期の対処が必要です。赤ちゃんでは、下痢が長びくこともあります。ロタウイルスの場合酸っぱい臭いのクリーム色~白色をした下痢が見られ、だんだん水のような下痢になります。発熱はあまり見られませんが、時に高熱を伴うこともあります。
高齢者の急性胃腸炎予防と対処法
脱水症状に注意し、症状がひどくて水分も摂れない場合には医療機関を受診して下さい。
急性胃腸炎の再発防止
再発防止のための生活習慣
バランスの取れた食事と適度な運動を心がけましょう。胃腸炎を起こすウイルスは一般的に加熱に弱い特徴があります。特に貝類、肉類はしっかり火を通して食べること、殺菌消毒していない生水を避けることで感染のリスクを下げることが可能です。細菌性の胃腸炎についても同様のことが言えますが、熱に強い菌もいるため、予防策としては作り置きせず、食べる分だけ作るなどで食中毒を回避しましょう。
急性胃腸炎と日常生活
発症時の生活管理
安静にして体力を回復させます。適宜、水分補給しながら脱水予防もしましょう。
仕事や学校への復帰時期
急性胃腸炎の症状(特に嘔吐や下痢)が改善してから少なくとも48時間経過してから復帰することが推奨されています。感染力が強いため、完全に症状が治まってから他人と接触するのが安全です。また、医師の判断を仰ぐこともよいでしょう。
急性胃腸炎と免疫力
免疫力が高いと感染しにくくなります。免疫力を高めるためにも、栄養バランスの良い食事と規則正しい生活を心がけましょう。
まとめ
急性胃腸炎は感染性が高く、早期の対処が重要です。
日常的な手洗い等の衛生管理と適切な食品管理、そして健康管理が予防に役立ちます。